警察庁 教育普及アニメーション

警察庁による教育普及のアニメーション作りにおいて、モーショングラフィックス、アニメーションの構築、Vtuber3体の作成、プレゼン画像のブラッシュアップを担当しています。イラストは別の方が担当しています。動画はトータルで35分ほどです。

作画部分はイラスト担当の方から送られてきた画像に手を加えて、表現がより効果的になるようにブラッシュアップさせており、吹き出し・フォント・影足し・エフェクト足しなどの作業を経てアニメーションさせています。
昨今のアニメによって目の肥えた高校生達に対して説得力を持たせるためには、これくらいのクオリティが必要かな?というバランス感覚で作成しています。

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今作は台本の構成において、こっちでディレクション出来ていれば遥かに良いものが作れてたのになぁ……という、非常に残念な内容になっていたので、反省の意味も込めて所感を記します。

広告代理店の作成した台本を見た時点で、映像として成立しないなと思いました。
台本には業界に通底する書き方の作法がありますが、そうした技術・経験の無い人が書いていることが明らかでした。
そのため、映像的な肉付けをどうするかに苦心しました。

改善策として、Adobeの新しいツールであるChを一から学んでキャラクターイラストをVtuber化することで、キャラクターにモーションをつけたり、声優の音源から効率的なリップシンクを行いました。
企画案の時点では、単なる静止画&口パクだったことに比べれば、格段に改善したポイントです。
モーショングラフィックスを多用したアニメーション部分に関しては、映像的にも及第点だったと思います

さて、今作を作るにあたって、代理店の担当者やプロデューサーを自称するスタッフとの折り合いが悪く、特にクリエイターとして持つべき倫理観を共有できなかった点が多くありとても残念に思いました。
例えばですが、先方の用意したロゴのデザインが色覚異常(色覚多様性)の方には見えづらい形状をしていたため、ユニバーサルデザインに配慮した具体案をこちらから提示したものの取り入れられることはありませんでした。また、台本の中にキャラクターの具体的な身体的特徴をあげつらいネガティブなイメージと結びつける箇所があったために文言の修正を求めましたが結局なしのつぶてでした。男女比を比較するグラフの色が青とピンクという単純な色分けがなされていた部分は、色彩を独断で変更しています。アリのように文字の小さなグラフの改善の要求にも対応してもらえず、一体誰が目を通してくれるのか疑問に思いながら映像に組み込みました。等々、挙げれば本当にきりがありません。

マスをターゲットにする作品作りにおいて、マイノリティに配慮すべき点も創作に内包することは職業的倫理だと思っています。ましてや、今作は教育普及の教材ですから尚更です。しかしながら、こうした提案に対して先方からなんら反応や理解がないというのは、当人らの社会問題に対する意識の無さが透けて見え、そうした作品作りに加担することはとても暗い気持ちになるものです。彼らには視聴者の目線に立つ想像力を養ってほしいものです。

こうした不協和は、創作の外の部分にもありました。
クリエイターの多くは報酬の多寡のみではなく、実績作りを求めて作品作りに関わる方も多いと思います。
しかしながら、先方の提案としてクレジットに名前を載せない・作品作りに関わったことを公表するなという一方的な要求が納品終了後にあり、クリエイターに対する敬意や配慮が全く欠けていると言わざるを得ませんでした。
契約書には著作者人格権を行使しない旨に対する条項も何もなかったので、そうした意識すらもともと無いのでしょう。平時から他のクリエイターに対してもこうした杜撰な契約をしていることがうかがえます。私は了承していませんが、一応は配慮してSNSでの公表は控えています。

また自称プロデューサーの制作進行がITに暗いだけではなく、要領を得ない言動、ミスを隠して共有しないその場しのぎ対応、人との距離感が壊れた不気味な連絡をたびたび寄越すものですから、こうした人たちと仕事をするのは人生の無駄だと切実に思いました。この自称プロデューサーは何故か音響監督の業務を兼任していましたが、収録にあたって事前準備を何らしておらず、都度、他者に対して意見を求めている様は素人以外の何者でもありません。責任を負ってでも作品を作ろうという気概もプライドも無いのです。
あまりに足を引っ張るのでどうやって業界に居座っているのか疑問でしたが、方々に提灯を持つ言動を繰り返しており、そうしてなんとか誤魔化してきているのでしょう、ひたすら不快な人物でした。
コミュニケーション能力というのは、ゴマすりと追従ではなくって、
自分のイメージを人に対して、どう的確に、どう気持ちよく伝えるかを模索できる能力のことでもあると思います。
そうした意識が欠落しており、当事者間ですらまともに意思疎通が図れない人物が、不特定多数の視聴者への作品作りに関わっているというのは本当にいびつなことではないでしょうか。

企業体質の問題なのか、これがアニメ業界の人材の実態なのかはわかりませんが、本当に失望の連続でした。
スタッフの質の向上と、業界の健全化を切実に願っています。

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